買い手候補を探す
第三者事業承継(M&A)による事業承継を行う場合には、必ずしも買い手候補は同業者である必要はありません。では、具体的にどのようなパターンが考えられるでしょうか? 大別して以下の3パターンがあります。
事業承継を行う売り手側経営者はできるだけ高い価値をつけて欲しいと考えるでしょうから、買い手候補を探す際にもこの点を考慮して、どのような相手だとより高い価値を見出してくれるかという視点が重要です。もちろん、魅力ある事業、儲かる事業であれば高値でも譲り受けたいと考える企業はたくさんあるでしょうが、すべての企業が好条件を備えているわけではありません。
一方で、買い手の視点からすると、M&Aによって目指す戦略がそれぞれ異なっています。大きく分けて上記の3つのパターン(買い手にとってのM&A戦略)が考えられます。
(1)同業者
同業者が目指す戦略は、まずは規模拡大による効果(規模の経済)です。調達品の発注金額増加に伴い仕入れ価格の値下げ交渉力が増す可能性があります。また、製造業ですと大量生産により設備稼働率を向上させ、コストダウンが可能になる可能性があります。
(2)異業種
異業種の場合は、同じものを製造したり、販売しているわけではないので、単純に規模の経済は効きません。一方で、譲り受けた企業と同じ経営資源(ヒト、設備、事業拠点など)を共有することにより、より効率的な事業運営を行い、売上や利益を増やすことができる可能性があります。例えば中古車販売会社が、レンタカー会社をM&Aで統合することによって、保有する中古車在庫をレンタカー事業に回す可能性がでてきます。
(3)垂直統合
最後に、垂直統合によるM&Aは、自社の商流の上下(販売先と仕入先)をM&Aによって自社のコントロール下に取り込むことです。例えば旅行会社がリゾートホテルを傘下に入れて、自社独自の旅行パッケージを提供するということが考えられます。垂直統合がうまく行くのは、統合することによって、独自の価値提供やコスト削減が可能な場合であって、すべての垂直統合がうまく行くわけではないので慎重な検討が必要です。