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グローバル経営は何故うまく行かないのか(業績管理2/2)


海外子会社業績管理の難しさ

 海外子会社から提出された予算や事業計画が妥当かどうかを本社側で査定することは必須ですが、国内事業の管理と比べるとなかなか難しいものがあります。言葉の違いや物理的な距離からなかなかうまくコミュニケーションがとれないということもありますが、より本質的な課題は、経営スタイルの違いです。以前にこちらのブログでも紹介したエリン・メイヤーの「異文化理解力」にも示されているように、日本人の文化的特性として「対立回避型」、「間接的なネガティブ・フィードバック」の傾向が強く、これは欧米諸国に対して特に顕著です。このため、言葉の問題は通訳を使って対応できたとしても、日本人からの曖昧な(やんわりとした)言い方や、対立を避けてとことん議論することを避ける傾向のために、海外子会社から提示された計画がなんとなく承認されてしまう、というケースが頻発します。

 これを避けるためには、提示された計画に対して、適切な質問を行い、検討が甘い点や前提が間違っている点については、再検討を指示するなり、予算そのものの見直しを明確に伝える必要があります

 また、中長期的には、こういった異文化を理解し、適切に対応できる人材の育成が必要になります。海外勤務で鍛えた人材を本社に戻して海外事業のマネジメントを行わせる、といったローテーションを組むにしても5年から10年の時間が必要になります。また、時間を買うという意味では、既にグローバル経験の豊富な外部人材の採用や、一定期間、外部コンサルを活用するという方法もあります。

どうやって「適切な質問」を行うのか?

 それではどうやって適切な質問を行うのか、ということですが、M&Aの際に行われる事業デュー・ディリジェンスの手法を活用し、以下の例示する方法で効果的な予算レビューを行うことが有効です。

 例えば、予算などの利益計画であれば、右図のような収益ツリー(KPIツリー)に従って、数字の前提を分解しながらひとつづつ確認していくという方法があります。

 売上が増えるという計画であれば、その前提となる販売数量や新規顧客獲得、既存顧客の売上増の要因は何なのか、という点。そして、売上が増えるという予算であれば、それを実現する販促費、人員、設備投資などは予算に適切に織り込まれているのか、といった点から掘り下げていきます。また質問を掘り下げる中で、単なるあら捜しではなく、計画に潜むリスクは何なのか、計画を達成するためのボトルネックは何があって、どうすればそのボトルネックが解消できるのか、といった対話を深めていくとより有効な議論ができます。

 また、中期計画などにおいて中長期の戦略を検討する必要がある場合には、更に、市場環境・顧客動向、経済動向、競合の動向などの外部環境の確認も必要です。

 以上のような、前提条件の確認、リスクとボトルネックの把握ができてはじめて、計画が承認される、というステップを踏むことが、業績管理の大前提となります。

 

成長戦略としての海外への事業展開を戦略策定、フィージビリティスタディの段階から具体的な実行、実行後の海外事業管理体制の構築まで一貫して支援します

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