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グローバル経営は何故うまく行かないのか(ガバナンス)


 国内市場が成熟化する中、日本企業の海外進出は増加をつづけており、日本企業が海外に所有する子会社の数は増加の一途をたどっています。特に近年では中堅・中小企業による海外投資が活発に行われています。日本企業の海外事業への異存度が高まるにつれて、海外子会社を適切に管理し、業績を伸ばすとともに、リスクをどうやって回避するかということが重要な経営課題になってきています。

 一方で、海外子会社に対する日本本社側の経営管理体制については、多くの点で脆弱な面が見受けられます。具体名には言及しませんが、世間の目から見ると「グローバル企業」とみられている会社において、昨今、不祥事や経営リスクが顕在化していることをみると明らかです。   また、海外投資をはじめてから間もない企業の中には、海外子会社の経営にどのようにかかわっていくべきか、という点について苦慮しているケースも多いと思われます。

ガバナンス規程・リスク管理体制の構築

海外に子会社を設立した時に、会社の運営方針として、まず最初に決めるべきなのは、日本の本社からどの程度の権限を委譲し、どの程度の内容であれば、権限移譲は行わない(=日本の本社が最終決定を行う)のか、という点を明確にすることです。また、現地パートナーと合弁会社を設立した際にも、日本側が経営権(過半数の株式保有)をもっているのであれば、同様の対応が必要です。

なぜ権限移譲を明確にするのか?

(1) 事業環境の違いや距離的な問題  海外に子会社や合弁会社を立ち上げる際には、幹部も含めて、日本から人材を出張や出向で派遣して対応するケースが多く、その際には日本側の意向を汲んで事業の立ち上げが行われるが、それとて、地理的に離れている中で、日本本社の経営者がこと細かく指示を出すことは難しいものです。  また、商習慣、法規制などが日本とは異なるため、現地事情をよく知らない日本の本社がすべてのことを判断し、承認を行うのは難しい場合も多いと考えられます。  加えて、事業の発展とともに、日本人マネージャーだけで会社の経営を行うのは難しくなってくるので、現地採用のマネージャーも必要となってきます。現地での販路開拓が重要であれば、営業部長は現地採用という場合もあるかもしれません。また、雇用慣行の違いから、人事マネージャは会社設立時から現地採用者を任命するケースもあります。 (2) 文化的な違い  上記の通り、ある程度、海外子会社の事業が伸びてくると、現地採用の幹部も増えて来るのが一般的です。そうした場合、現地幹部が自ら決定できる事項はどこまでか、という意思決定のルールを文書化する必要があります。国によって文化、風習が違うのは当然ですが、単一民族で阿吽の呼吸でやりとりする日本人同士でのコミュニケーションは世界の中でも異質だと考えておくべきでしょう。異文化を理解するには、Erin Meyerの著書The Culture Map(邦題:「異文化理解力」、エリン・メイヤーが良い参考になると思います。この著書の中でも、日本は「ハイコンテクスト」(High context)が強い文化と位置付けられています。あうんの呼吸が通用する世界ということです。これと対極(ローコンテクスト、Low context)にあるのが、アメリカですが、他の欧米諸国やアジア諸国も日本よりはローコンテクストであるということに留意する必要があります。

(失敗例1)合弁パートナー任せ

海外で現地パートナーと合弁会社をつくった。合弁会社の持ち分は日本側が51%を保有するので、日本本社の子会社であるが、日本の本社では現地事情に疎いこともあり、実際の経営は現地パートナーからの派遣者に任せておいた。時々役員会を開催するが、現地の事情を知らない日本の幹部が年に数回役員会に参加しても、現地の事情は全く分からない。そのうち、合弁会社の資金繰りが行き詰まり、日本本社に増資の要請が来たが、日本側では事情がわからず誰も判断できない状態になってしまった。

(失敗例2)マイクロマネジメント

海外子会社の設立当初は日本から幹部を送り込んでいたが、現地の人材も育ってきたので、子会社経営陣は社長を含め現地スタッフ中心で構成されるようになってきた。ガバナンス体制をしっかり構築する必要があるとの判断から、会社の経理、人事、投資などすべての活動に対して、日本本社内と同じ稟議規程で決裁を行うようにした。ところが日本的な時間のかかる決裁プロセスや本社からの細かい指示に現地幹部が嫌気をさし、社長が幹部を引き連れて一斉に転職してしまった。

権限移譲の考え方

 グループ全体の事業に与える影響度、リスクの大きさを検討した上で、権限移譲規程を作成する必要がありますい。これにより、本社が必要に応じて子会社経営に関与し、重大なリスクを未然に察知、予防するといったことが可能になります。権限移譲が明確になっていないと放任経営になり、一方で、箸の上げ下げまで口をだす経営(マイクロマネジメント)では現地幹部のモチーベションが上がらないことになります。このバランスをどうとっていくのかという点は、グローバル経営管理の根幹をなすものです。具体的な権限移譲の方法については次回のブログで紹介することにします。

 

成長戦略としての海外への事業展開を戦略策定、フィージビリティスタディの段階から具体的な実行、実行後の海外事業管理体制の構築まで一貫して支援します。

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