会社の価値はどうやって決まるか?(3)DCF法
中小企業のM&AにDCF法は向かない、ということがよく言われています。本当にそうでしょうか?
確かに日ごろから事業計画を作成している中小企業は少ないので、事業計画をもとに価値を算定するDCF法は向かないというのは一見もっともな議論にも聞こえます。

一方で、買い手の視点からすると、対象企業の事業の見通しもわからずに、事業を譲り受けるというのはあり得ない(あってはならない)ことだと思います。たとえ売り手が事業計画を作成していなかったとしても、入手した過去の財務諸表やデュー・ディリジェンスで得た事業の見通しをもとに買収後の事業計画を策定する必要があります。
また、売り手としても、買い手から提示される価格をうのみにするのではなく、自ら事業計画を立てて、これをもとに価格を交渉するくらいの姿勢をとるべきだと思います。
今後5年程度の事業計画があれば、これをもとにDCF法で事業価値を算定するこは可能です。
サンプル(DCFモデル)にあるような形で、営業利益からキャッシュ・フローを導きだし、それを一定の割引率で現在価値に割りもどすことで算定できます。
【DCF法による事業価値算定の手順】
ステップ1:損益計算書からEBITDA(利払い前・税引き前・減価償却前利益)を算出
ステップ2:EBITDAに実効税率をかけて、法人税を算出。EBITDAから法人税を控除してNOPLAT(みなし税引後営業利益)を算出
ステップ3:NOPLATからフリーキャッシュ・フロー(FCF)を算出。
FCF=NOPLAT+減価償却費-設備投資額-運転資本増加額
※運転資本は、過去のBSをもとに売上に対する回転率を計算し、これを計画上の売上に掛けて算出 すると簡単に予測できます。
ステップ4:各年度のFCFの現在価値と残存期間(通常は最終年度のFCFをもとに計算)を算定して、その
合計が事業価値となります。株式価値を算定する場合には、事業価値から純有利子負債を控除して算 出します。
