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のれん代とは何か?


最近、M&Aにおけるのれん代が話題となることが多くなったように感じます。

一つは、RIZAPのM&Aにおける「負ののれん」の話。もう一つは国際会計基準におけるのれんの取り扱いの再検討に関する話題です。

(1)のれん代(Goodwill)とは

 のれん代とは、M&Aの際に買い手が支払う譲渡価額と対象企業の純資産(簿価)との差額をいいます。上場企業の株価が純資産の金額を大きく上回ることは一般的な話です。これは会計上財務諸表には現わせない企業の価値(ブランド、顧客との関係、従業員のノウハウなどの知的資産による将来の収益力)が株式時価総額に反映されているからです。同様に非上場企業のM&Aにおいても対象会社の株式価値は、赤字企業でもない限り純資産を上回るのが一般的です。この純資産との差額をのれん代として会計上計上し、一定期間(日本の会計基準では20年以下)で毎年償却していきます。

(2)RIZAPにおける負ののれん

RIZAPのように、赤字企業を純資産以下の金額で買収するとのれん代がマイナス(負ののれん)となります。負ののれん代は、日本の会計基準でもRIZAPが採用している国際会計基準(IFRS)においても、一括で利益に計上されます。日本の会計基準では特別利益、国際会計基準では営業利益に反映されますので、RIZAPの決算書をよく読まないと、この負ののれん代による利益が、本業の営業利益と区別がつかなくなり誤解を生む恐れがあります。

尚、念のため、RIZAPの有価証券報告書や決算説明会の資料を読んでみましたが、負ののれんに関することは記載されていますので、のれん代の取扱いについては情報開示上は問題ないと思われます。むしろ、問題視されているのは、負ののれんによる利益計上を目論んで、本業とは関係の薄い事業を次から次へと買収していく会社経営のあり方なのかと思います。この点は今後どのように軌道修正をしていくのか気になるところです。

(3)国際会計基準(IFRS)におけるのれん代

のれんは日本の会計基準では20年以下の期間で償却することになっていますが、国際会計基準では定期償却はありません。毎年、のれん代の回収可能性(買収した事業からの事業収益で投資が回収できるかどうか)が検証され(減損テスト)、もし回収不能となった場合には、減損という形で一括して損失を計上することになります。

 国際会計基準を適用している東芝は買収した米国の原子力事業で7,000億円を超える巨額の減損損失を計上し、経営危機に陥りました。過去ずっと減損はなかったのに、ある時突然巨額の減損損失が発生するという現象が国際会計基準では起こり得ます。

 このことから、「日本基準で毎年償却していればこのようなことは無かったのに」という議論もでてきます。日本の会計基準においても、のれん代の減損テストはありますが、国際会計基準と違って、毎年のテストではなく「減損の兆候がある場合」という一定の条件がありますので、国際会計基準に比べると減損損失の発生するリスクは低いと言われています。(減損がないわけではありません)

 IFRSを採用するEUの上場企業や、のれん代の償却を行わない米国と、日本基準を採用する国内企業とのM&Aにおける会計処理が大きく異なることは、今後のM&Aの動向そのものにも影響を与える大きな課題です。これに加えて、最近、国際会計基準を策定する国際会計基準審議会(IASB)が、のれん代の費用計上の議論を始め、2021年にも結論を出す、という報道がありました。これが実現すると、今度は、IFRS採用企業ののれん代償却費が損益を圧迫するため大型のM&Aをやりづらくなるという事態が発生します。

 一見、中小企業のM&Aや事業承継には関係ない話題に見えますが、M&Aの買い手が上場企業の場合には、採用する会計基準(日本基準か国際会計基準か)によって、M&Aに伴う費用計上の仕方が異なるということは理解しておく必要があります。

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