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デュー・ディリジェンスを受ける側の対応


 第三者への事業承継(M&A)に際して、買い手候補との株式(事業)譲渡契約の締結に先立って、買い手候補からのデュー・ディリジェンス(Due Diligence)を受けることになります。Due Diligenceとは、due(当然の、正当な)、diligence(注意、配慮)、すなわち、買い手側が事業を譲り受けるに際して「払うべき必要な注意」を意味します。このため、「事前詳細調査」、「買収監査」など訳されることもありますが、あまり適切な日本語訳はないので、英語のままデュー・ディリジェンスと言われたり、発音しづらいので、略してデュー・デリとかDDとか言われることもあります。

デュー・ディリジェンスの対象範囲

 「会社を買う」という行為に対して「必要な注意を払う」ということですので、会社の存在そのものから事業活動に関するものまで、ありとあらゆるものが含まれます。実務上は、以下の3つの専門領域で調査を行うケースが多いでしょう。

(1)財務デュー・ディリジェンス

 主に、公認会計士、税理士が担当します。会社の決算処理や税務申告が適正に行われているかどうか、実態財務諸表(時価ベースでみた場合の純資産)、正常収益力(特殊要因を除いた本来的な事業の収益力)、キャッシュ・フロー分析(必要運転資本や短期的な資金不足リスクの有無など)を中心に調査を行います。

(2)法務デュー・ディリジェンス

 主に、弁護士が担当します。会社の定款、登記、取締役会等に関する会社の設立に係る基本的なものから、各種契約書上の問題点、コンプライアンス違反・訴訟の有無など、法律面やコンプライアンス面を中心に調査を行います。人事労務管理面でのコンプライアンス(長時間残業、未払い残業代など)もカバーされます。

(人事労務管理における制度面の調査は法務とは別に「人事デュー・ディリジェンス」として行われる場合もあります。)

(3)事業デュー・ディリジェンス

 事業がおかれている外部環境、競合状況、顧客との関係、提供する商品・サービスの品質・競争力、組織体制、従業員のスキル・ノウハウなど、事業の継続可能性や成長可能性を調査するものです。  事業デュー・ディリジェンスは、「事業」の内容にかかわることなので、本来は、買い手企業の事業部門などが責任をもって進めるべきですが、M&Aに慣れていない企業や、スタッフに限りのある企業では、自前での対応が難しいことがあり、M&AアドバイザーがM&Aの交渉に加えて、事業デュー・ディリジェンスを支援することもあります。

デュー・ディリジェンスの方法

買い手候補(およびそのアドバイザー)から資料提供の要請がありますので、その要請に応じて情報を開示することになります。また、インタビュー形式で買い手候補から質問を受けます。通常は、資料提供とインタビューを組み合わせて行われます。インタビューを誰が受けるべきかというのは決まったものはありませんので、あくまで売り手・買い手間で協議して決めることになります。売り手としてはなるべく極秘裏に進めたいので社長のみに限定したいところですが、買い手としては、もう少し実務レベルに近い幹部のインタビューも行いたいということが多いため、両者でどこまで許容できるかを協議しながら進める必要があります。

 また、マネジメント・プレゼンテーションといって、売り手の経営者が買い手候補に対して、あらかじめ用意した資料で事業内容を説明することもあります。買い手は対象会社のことはよくわからないので、最初にマネジメント・プレゼンテーションを行うとその後のデュー・ディリジェンスも効率よく進むことがありますので、売り手としては検討してみても良いでしょう

デュー・ディリジェンスを受ける側の準備と心構え

 デュー・ディリジェンスで得た情報とその分析結果をもとに買い手側は、この案件を進めるべきか中断すべきか判断します。また、分析結果をもとに、会社の株式価値(事業価値)を算定します。買い手としては、デュー・ディリジェンスで開示された情報が正しいという前提のもとで経営判断を行いますので開示された情報の正確性、網羅性は買い手候補にとっては非常に重要です。このため、株式(事業)譲渡契約では、売り手が提供した情報の正確性を保証すること(表明保証)が求められます。また、表明保証違反が後で発覚した場合には、買い手から損害賠償請求をされることになります。したがって、売り手はデュー・ディリジェンスに際しては、正確な情報を開示する必要があります。「これは不利になる情報だから出さない」というような対応をとった場合には、株式(事業)譲渡後に損害賠償請求を受けるリスクがありますので、最初から誠実な対応を行うに越したことはありません

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