グローバル化に舵を切る日本
今日(12月8日)、国会で改正出入国管理法が成立し、2019年4月から施行されることになった。国内企業の深刻な人手不足に対応し、従来認めてこなかった単純労働分野への受け入れを開始するという意味では、大きな転換点となる。単純労働者の受け入れに加えて、熟練労働者に対して事実上の「永住」(在留資格の更新回数制限なし)を認めることになった。政府は移民政策ではないとのスタンスを維持しており、無尽蔵に労働力が増えるわけではないが、人材不足に悩む中小企業にとっては、今後人材確保の面で選択の幅が広がることになる。
一方で、後継者不足に悩む中小企業の事業承継対策の一つとして、外国企業による国内企業への投資も今後拡大していくものと思われる。既に経済産業省も中小企業のM&Aデータベース(売り情報、買い情報)を海外企業に開放することで、中小企業の廃業を防ぐ方向で動いている。

最近では海外企業による日本企業の買収(アウト・インM&A)も珍しくなくなっているものの、日本企業の経営者や従業員にとって抵抗感がある。言葉や文化風習の違いに加えて、「外国企業はすぐリストラを行う」、「技術を盗むことしか考えていない」といった懸念もあるのは事実である。この反面、日本企業がもっていない海外販路やインバウンド(訪日)顧客を有する企業が、後継者のいない日本企業を買収することにより、国内企業同士では得られない大きな成長機会を獲得できる可能性もある。また、日本国内では買い手が見つからず、このままでは廃業せざるを得ない中小企業が、海外企業からの資本参加によって、事業を継続し、雇用を維持できる可能性もある。メリット、デメリット両面あるものの、アウト・インM&Aは、これからの第三者事業承継(M&A)における有力な選択肢となり得るのではないか。
今までの日本のグローバル化は、輸出や企業の海外進出であったり、市場開放によるモノの輸入拡大という視点が中心であったが、これらに加えて、今後のグローバル化は、「人材の流入」や「資本の流入」の活性化という方向に向かって行くであろう。これらの環境変化を「機会」としてどのように企業戦略に活かせるか、中小企業経営者にとっても重要な課題となってくる。