• Tommy Nagayama

シナリオ・プランニングでM&Aに成功する


‘90年代から2000年代にかけて、飛ぶ鳥を落とす勢いで、携帯電話事業で世界を制覇したフィンランド企業Nokia。日本では、国内通信・家電メーカがこぞって携帯電話を作っていたので、あまり名は知られていないが、一時期は世界市場の4割の市場シェアを誇っていました。そのNokiaが、iPhoneとAndroidの登場でわき役に追いやられ、倒産の危機に瀕していました。誰もがもうNokiaは立ち直れないだろうと思っていたところ、いつの間にか、携帯端末の事業をMicrosoftに売却し、Siemensとの合弁であった無線通信インフラ事業を買収、更には、フランス(とアメリカ)の大手通信メーカAlcatel Lucentを買収し、現在では、通信インフラのグローバルプレーヤになって見事によみがえっています。

このあたりの経緯はだいだいは新聞報道で知っていたものの、「Nokia復活の軌跡」(原題:Transforming Nokia、リスト・シラスマ著)を読んで、この復活劇が単なる偶然や成り行きの結果ではなく、トップの強力な起業家精神とリーダーシップと用意周到に練られた戦略(シナリオプラニング)の結果であることが理解できます。400頁の本ですが、企業復活劇の白熱のドラマとしても面白く読めますし、また、そこで得られる教訓は実践的な経営書であり、事業再生やM&Aの優れた教科書でもあります。

現在もNokia会長を務めるシラスマ氏は、Nokia出身者でもなく、また外部から招へいされたプロ経営者でもありません。彼自身は起業家で、Nokiaとも取引のあるソフトウェア会社の社長でした。彼がNokiaの取締役会に入った頃からNokiaの様子がおかしくなり、そして最悪の事態を迎えようとするときに会長への就任を要請されます。彼は、次第にNokiaが抱えている企業文化面での問題に気づきます。誰も現場の問題を直視せず、取締役会には悪いニュースは出さないし、議論も行われない。(どこかの国の企業でも同じではないかと思いますが)

AppleのSteve Jobsからは、「NokiaはAppleの競合ではない、」と言われます。Nokiaは端末を売る会社で、Appleは、端末からアプリ、コンテンツまでを一つのプラットフォームとして売る会社なので、戦う土俵が違うということでしょう。 そして、Nokiaは、日本の携帯端末メーカと同様、Apple, Googleといったプラットフォーマの後塵を拝し、韓国・中国の端末メーカにも市場を奪われて行きます。

倒産の危機に瀕したNokiaは、独自OSでは戦えないと判断し、Microsoftと組みますが、スマホOSは既にAppleとGoogleが支配しており、Windows携帯では勝ち目がありません。苦渋の決断として、主力事業の携帯電話をMicrosoftに売却します。(私は、当時、このニュースを聞いて、Nokiaは完全に終わったと思いました。)

Siemensとの合弁事業であった無線通信インフラの会社(NSN)は、当時、赤字でした。SiemensもNokiaも売却を考えましたが、うまく行かず、お荷物になっていました。Nokiaは、Siemensの持ち分を買収して、主力事業にしました。更に、これだけでは通信インフラ企業としては弱いので、Alcatel-Lucentを買収したのです。

この破壊的とも言える事業の入れ替えによる事業再生劇は、実は偶然の産物ではなく、用意周到に検討された数多くのシナリオの中から、徹底的な分析と社内での誠実な議論の中で選ばれた戦略であったのです。シラスマ氏はこれを「パラノイア楽観主義」と呼んでいます。パラノイア(偏執症)のように、未来を心配し、ありとあらゆる可能性を考える。そして、考えた結果を前向きで先見性のあるシナリオに進化させること。(シナリオ・プランニング)

シナリオ・プランニングとは、将来の環境変化に対するシナリオを複数用意し、各々のシナリオへの対応を考察する手法で、不確実性の高い事業の戦略を練る際に使われることがあります。

シラスマ氏は、一連のM&Aの交渉においても、シナリオ・プラニングを活用しています。交渉状況によって、採るべきシナリオの選択肢を複数用意しておくことで、交渉相手から不意打ちを食らうことを避けることができるからです。

事業再生という将来が不確実な局面におかれた企業、あるいは企業戦略としてのM&Aを考える企業にとって、シナリオ・プラニングの手法は大いに役に立つのではないかと思います。「いくらでも良いから早く会社を売りたい」とか「何としてもこの会社を買いたい」といった一本調子の戦略ではなく、多様な選択肢をもって、戦略の検討や交渉を進めることが成功の秘訣だということを、この本を読んで改めて痛感させられました。

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