• Tommy Nagayama

中小企業は本当に不要なのか?(1/2)


ゴールドマンサックス出身のイギリス人デービッド アトキンソン 氏の著書「国運の分岐点 中小企業改革で再び輝くか、中国の属国になるか 」(講談社)が話題になっています。タイトルは少し過激ですが、内容は、元証券マンらしく、統計データにもとづく理路整然とした議論を展開しており、一読の価値はあると思います。

要約すると、以下のポイントを挙げています。

・非正規従業員と女性労働者の増加で賃金水準が低下。 ・日本の最低賃金は先進国の中でも際立って低い。(独$11.1 米$9.3 韓$8.3 日$7.1) ・日本の生産性(一人当たりGDP)は、$42千で世界第28位。(米の7割程度、購買力調整後) ・20人未満の企業で働く人の割合は、日本が20%、アメリカは10% ・中小企業保護施策が生産性の低い企業を温存している ・最低賃金を上げなければ生産性は上がらない(企業の自主性に期待するのは無理で、政策が必要) ・生産性が上がらないと高齢化に伴う社会保障費の負担を維持できず、財政が破綻すると中国の属国となるしか選択肢はなくなる。

中小企業不要論のように受け止められているようですが、要は、生産性を上げられない中小企業は統廃合して、規模

の経済により生産性向上を目指すべきである、ということです。

中小企業が皆大企業に買収されて、大企業ばかりになれば生産性は上がる、というのは、確かにその通りかもしれませんが、現実には、様々な他の選択肢もあるのではないでしょうか?

まず第一に、現在の日本の大企業が単に規模を追求して中小企業を買収するということは、多分、あり得ないでしょう。既に規模の経済を確立している大企業が、小さな中小企業を買収しても、統合の手間がかかるだけで、規模の経済は単純には効きません。また、そもそも現在の事業環境の中で、規模を追っている日本の大企業がどれだけいるでしょうか? 例えば、自動車業界はCASE(注)の時代に向けて、テクノロジー、ソフトウェアへの投資を加速しており、生産規模を拡大する投資を行っているわけではありません。むしろ電気自動車で部品点数が大幅に減るため、生産能力は縮小に向かいます。また、IT業界でも同じく、AI,IOTといった先端技術には投資しますが、単に規模を拡大する戦略をとっている企業はありません。規模の拡大で言うと、海外企業の買収くらいで、縮小する国内市場で規模の拡大を追求するような無謀な戦略をとっている大企業はまずありません。

一方で、中小企業同士のM&Aは活発になっています。跡継ぎのいない会社の事業承継問題への解決策としてM&Aが今後も増大してきます。中小企業同士のM&Aですと、大きな規模の経済は働きませんが、例えば、特定地域での市場プレゼンスを拡大するような中小企業同士のM&Aであれば、一定の規模の経済が働き、生産性向上も期待できます。

M&Aには、規模の経済以外にも、相乗効果(シナジー)をもたらすことがあります。異業種間のM&Aにおいて、

買い手企業と売り手企業の事業が補完的であれば、規模の経済は働かなくても、生産性の向上が期待できます。例えば、EC事業で化粧品を販売している会社が、家電事業の会社を買収し、自社のECのプラットフォーム載せて販売すれば、既に構築してあるECのインフラを使って、殆ど追加投資なしで事業の拡大ができます。このようなM&Aが増えると、中小企業同士の統合であっても、生産性の向上は目指せると思います。もちろん、買収後にシナジーを生み出すための、綿密な計画策定と着実な実行(PDCA)は必須です。

このような見方をすると、同書の提起した課題も、「中小企業は不要」というネガティブな見方ではなく、どうやって中小企業の生産性を高めていくべきか、という有用な議論になれば良いかと期待しています。

(注)CASE: Connectivity(つながるクルマ)、Autonomous(自動運転)、Shared(カーシェア)、Electric(電気自動車)の頭文字を合わせたもの

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