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グローバル経営は何故うまく行かないのか(人材マネジメント2/2)


グローバル経営を行うために人事制度は統一する必要があるか?

日本企業が海外展開する際に海外子会社の人事制度をどう設計するかという課題があります。

(ケース1)日本の人事制度をそのまま持ち込む

 日本から海外へ製造を展開する場合などは、日本の生産システムを持ち込みますので、生産現場での労務管理や人材育成も日本の工場と同じように運営したいという考え方です。現地の労働法や規制内容が日本とは異なるので多少は、現地に合うように調整するものの、賃金制度や職務等級制度など基本的な仕組みは日本から持ち込む方式です。

 特に途上国で、現地の人事管理制度が未熟な段階では、進出当初の対応としてこのような方法も有効だと思います。一方で、事業規模が拡大し、また現地の労働市場での人材の引き抜きが活発になってくると、現地の労働市場や慣行に合わせた人事制度をつくっていかないと優秀な人材も流出してしまいます。

(ケース2)現地の慣行に合わせて人事制度を設計する

 特にM&Aで現地の会社を買収した場合には、既にできあがった人事制度があるので、これを引き継ぐことになります。M&A(株主の変更)に伴う労働条件の変更やリストラは多くの国で規制がかかっており、M&A直後に雇用条件を変えるのは難しいと考えておくべきです。(もちろん、子会社化したあとで、労使協議の上で条件の見直しをすることは可能ですが、M&Aに伴う条件変更は原則できないということです。)

 また、最初から100%出資子会社であっても、現地での労働法や労働市場における競争力を考慮して、人事制度や賃金制度を決めていきます。ケース1よりもケース2の方が一般的ではないかと思われます。

 複数の国に進出してくると次の段階として、グローバルな事業の最適化を考え、日本の本社とそれぞれの国の事業が連携をはじめます。日本とA国の技術者で開発した製品をB国で製造し、日本とアメリカで販売する、といった複雑な事業展開も行われるようになります。日本本社が常に中心ではなく、現地の子会社もそれぞれの特徴や強みを活かしてお互いにグローバルに連携する組織をトランスナショナル組織と呼んでいますが、トランスナショナルな組織になってくるとケース2の各国毎に異なる人事制度では限界があります。グローバル人材が国境を越えて、一緒に仕事をしたり、他国に出向したり、外国人が本社の幹部ポストに就いたり、と様々な人材交流が行われるようになります。

 こうなってくると国毎にバラバラな人事制度だと組織の運営が難しくなってきます。かといって、労働市場の状況や賃金水準、法規制も異なる中で、すべての人事制度を統一するのは現実的ではありません。人材の国境を超えた移動や交流を支える仕組み、これは日本からの海外派遣者にとどまらず、海外拠点から別の国の海外拠点や日本の本社へ移動する人材の処遇の仕組みを作っていく必要があります。また、様々な国の人が一緒にチームで仕事をするようになると、誰がリーダーになるのか、というのは重要なポイントなので、職責・ポジションとそれに必要な職務遂行力(コンペテンシー)を定義していく必要があります

 また業績評価についても、一つの国(=一つの子会社)の業績で評価していた段階から、グローバルに展開される事業の業績を評価する必要がでてきますので、人事制度の設計だけでは不十分で、管理会計制度も整備していく必要がでてきます

 人事制度、管理会計制度を一度にグローバル化することは難しいですが、海外展開が進み、それぞれの国境を越えた事業活動が活発になってきた段階で、将来的なグローバル経営のあるべき姿を描き、そこに向けて経営の仕組みも徐々に進化させていく必要があります

 

中小企業の海外展開、海外子会社・ジョイントベンチャーなどのグローバル経営について、海外進出の初期的な検討(フィージビリティスタディ、事業計画作成)から進出後の経営戦略、組織運営、人事管理、財務管理など様々な課題に至るまで一貫した支援を行います。

 海外事業での成功例、失敗例を含めて大手企業で長年の実務経験をもとに、海外展開に悩む日本企業の経営者の方のご支援を行います。無料相談を行っていますので、お気軽にコンタクトください。

※事務所は大田区です。東京都内23区内であれば訪問相談可能です。(それ以外の地域の場合は、メール、電話、チャット等でのご相談も可能です。)

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