• Tommy Nagayama

グローバル経営は何故うまく行かないのか(ガバナンス2)


 今回は、海外子会社への権限委譲を進めるためのポイントについてご紹介します。

(1)権限委譲規程の位置づけ

 まずは、どのような形でグローバル経営管理を行うのかという基本方針を決める必要があります。現在何の規程も存在しないのであれば、「まずは、海外の子会社のガバナンス規程をつくる」という方針でも良いかもしれません。

 但し、中長期的に事業のグローバル化を進めていくためには、海外子会社に限らず、国内子会社や本社内の事業部も含めた、グローバル規程を築いていく必要があります。このためには、既存の国内の規程も見直す必要がでてくるかもしれません。グローバル化が進み、国内と海外との間で人材交流が進み、お互い同じグループ企業の従業員としてグローバルに事業を進めて行く際に、国内と海外で経営判断を行う基準が異なるというのでは真のグローバル化とは言えないからです。

 国内・海外共通の規程としていくためには、国内の既存の規程との関係や整合性を検討する必要があります。例えば、すでに存在する稟議規程、経営会議規程との関係はどうなるのか、という点です。様々な規程類を最初から全てグローバルに統合するのは現実的ではありません。また、それぞれの国の法律や慣習によって、国毎に内容が異なるルールが存在しますので、どのようなグローバル企業であってもローカル・ルールは当然残ります。

 したがって、現実的な解は、経営管理上、重要であり且つグローバルに意思決定ルールを統一すべき事項を抽出して、それらの項目をグローバル権限委譲規程としてまとめて行くことです。

(2)規程に織り込む内容とその判断基準

 それでは、どのような項目を世界共通の意思決定ルールとして位置づければ良いでしょうか? まずは自社のグローバルなビジネスモデル、バリューチェーンを描き、その中から経営に重大な影響を与える経営判断項目を抽出していくと良いでしょう。販売会社であれば商談応札や契約締結などの活動、製造会社であれば、設備投資や生産計画など重要な経営判断を伴う活動を抽出していきます。また、会社の管理機能として、事業戦略・事業計画、組織・人事、会計・資金調達などの基本機能毎に重要な経営判断を抽出していきます。

 それぞれの項目について、どこまで(金額であればいくらまで)子会社や各事業部に権限を委譲するのか、どのレベルであれば、本社での承認を求めるのか、といった判断基準を作成していきます。権限委譲を行うレベル(決裁金額等)については全世界一律でなくとも、事業の規模や成熟度に応じて基準を分けることも検討すると良いでしょう。立ち上げたばかりの製造子会社と、既にグループの中核となっている製造子会社では、事業オペレーションに関する習熟度は違いますので、当面の間は、新設工場への権限委譲は低めに設定し、本社側がより深くオペレーションに関与するというのが自然が流れだと思います。

本社側である程度の検討が進んだら、現地の経営幹部の意見もヒアリングして、実際の会社経営の観点から現実的かどうかというチェックもしておいた方が良いでしょう。また、場合によっては現地の法律等によって制約を受ける事項もありますので、本社と現地側での摺合せが重要です。

(3)運用プロセス

  権限委譲規程ができたからといって、それだけでグローバルな経営管理がうまく回るわけではありません。運営をスムーズに行うためには、それぞれのビジネスプロセス(案件の発生から承認を経るまでの手順)を書面で明確にしておくべきでしょう。円滑なグローバル経営には、異なる文化的背景をもった人材に共通の戦略や方向性で行動してもらう必要がありますので、基本は、ハイコンテクスト(言葉で明確に伝える)でのコミュニケーションに努めることです。

 また、権限委譲規程の運用を行う窓口を本社側で設置しておく必要があります。どこまで文書で細かく明確化したとしても、経営にとって重要な意思決定ですので、誤解や意思決定の遅れが生じないよう全体のプロセスを円滑に回す人・組織を配置する必要があります。できれば海外ビジネスの経験があり、日本本社の事情にも精通した橋渡し役(ブリッジ・マネージャ)を配置できると理想的です。もし最初の段階で、一人で対応できる人材がいないということであれば複数部署から人材を選定してチームで対応しながら経験を蓄積するという方法も有効だと思います。

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