• Tommy Nagayama

事業デュー・ディリジェンスの進め方


 12/31のブログで、サラリーマンは会社を買うべきか、というテーマをとりあげ、事業デュー・ディリジェンスは、買い手の事業責任者が行うものである、という説明をしました。外部専門家が中心となる税務や法務デュー・ディリジェンスとは異なり、事業デュー・ディリジェンスは、買い手の経営者が主体的に関わっていく必要があります

事業デュー・ディリジェンスの目的は大きく分けると3つあります。

(1)事業内容の把握とリスク分析

 事業内容を把握し、維持可能、成長可能な事業であるかどうかを見極めます。ここで重大な問題を発見した場合には、案件を中止するという判断も必要です。また、仮に中止するまでもないが、買収後に損害が発生するリスクがある場合には、株式(事業)譲渡契約書における損害賠償条項等でリスクを売り手が負担する形にします。

(2)事業計画の作成

 対象会社を取り巻く市場環境、競合状況、顧客動向などを把握するとともに、買収後に経営改善できる項目を洗い出し、買収後の事業計画を作成します。また、事業価値を算定する際にも、DCF法で評価を行う場合には事業計画が必要です。

(3)買収後のアクションプランの作成

 調査の中で洗い出した課題やリスクに対して、買収後どのように改善して行くのか。あるいは、対象会社の強みを活かしてどのような施策をとるべきか、といったアクションプランをまとめます。

 また、対象会社と買い手の事業を統合することにより、相乗効果(シナジー)が発揮できる場合には、どうやってそのシナジーを実現するのかという点をまとめていきます。シナジーについては、売上シナジー(例:両社の製品を一緒に販売することによる売上拡大など)、コストシナジー(間接部門を共通化によるコスト削減など)を検討します。

事業デュー・ディリジェンスのポイント

 財務や法務デュー・ディリジェンスと同様、書類での情報開示請求とインタビューによる質疑応答により調査を進めます。また、工場などの現場を視察することも重要です。

 以下の内容を確認しながら、まずはビジネスの全体像(ビジネス・モデル)を把握し、その上で、詳細なポイントを探って行きます。

外部環境  対象事業を取り巻く事業環境を把握します。切り口をPEST, Five Forces, 3Cなどの切り口から抜け漏れのないように調査する必要があります。

 ※PEST:Political,Economical ,Social ,Technologicalといった政治、経済、社会、技術要因から事業の機会や脅威を洗い出します。

 ※Five Forces: 顧客(買い手)の交渉力、競合との競争の強さ、仕入先の交渉力、新規参入者の脅威、代替品の脅威の5つの力(Forces)で業界の魅力度を計る分析手法。(マイケル・ポーターが提唱)

 ※3C分析:顧客(Customer)、競合(Competitor)、自社(Company)の三つの視点から市場環境を分析するもの (

大前研一が提唱)

内部事業構造

 対象事業のValue Chainを確認しながら、事業のどの過程で付加価値を生み出し、何が強みで、何が弱みなのかを把握します。また、企業のもつ経営資源に着目したVRIO分析も有効です。

 ※Value Chain分析:会社の事業活動を調達、開発、製造、販売などの各プロセスに分解し、どの部分で付加価値を生み出しているのか(価値連鎖=Value Chain)を把握し、企業の強み・弱みを分析するもの(マイケル・ポーターが提唱)

 ※VRIO分析:Value(経済価値)、Rarity(希少性)、Imitability(模倣可能性)、Organization(組織)の4つの要素を分析し、企業の経営資源の競争優位性を把握する分析手法。(J. B.バーニーが提唱)

 外部環境、内部事業構造ともにすべて漏れなく調査するというのは、時間的な制約もあり現実にはかなり難しいものですが、まずは、過去3~5年間の財務諸表の変遷を眺めて、外部環境や内部環境で何が起こっているのか仮説を立てながら、調査の中で仮設を検証するというアプローチをとると効率的に進められます

・SWOT分析と課題の抽出

 外部環境、内部事業構造の分析結果をもとにSWOT(強み、弱み、機会、脅威)をまとめた上で、課題を整理します。必要に応じて財務、法務、人事デュー・ディリジェンスの分析結果と照らし合わせて、整合性のある分析を行います。

 また、調査で判明したリスクについて、株式(事業)譲渡契約でどのように買い手を保護する条項として織り込むことができるのか検討します。この検討は、契約書を作成するM&Aアドバイザーや弁護士と一緒に進めると良いでしょう。

・事業計画とアクションプランの作成

 抽出された課題とそれに対する改善策や、M&Aによる統合効果(シナジー)をまとめた上で、それを事業計画に反映していきます。事業計画については、現状通りの経営でこの先どうなるのかというプラン(AS IS)と改善やシナジーを織り込んでどうなるのかというプラン(TO BE)を分けて作成しておくと、M&A実行後のフォローアップに役立ちます。

 尚、過去の財務諸表から将来の固定費、変動費などを見積もるわけですが、過去の財務諸表には様々な要因が含まれており、中には一過性の利益であったり、一過性の損失であったものも含まれている可能性があります。この点については、財務デュー・ディリジェンスの結果を踏まえて、検討すると良いでしょう。

#MA #事業承継

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