• Tommy Nagayama

サラリーマンは会社を買うべきか?


 今年話題になったビジネス書のひとつに事業再生・承継ファンド代表の三戸 政和氏が書いた「サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい」という本があります。この本がベストセラーになってからサラリーマンによるM&Aの問い合わせが増えているという話も聞きますので、相当インパクトのある本であったと思います。

 私は、帯に書いてある堀江貴文氏の言葉「終身雇用は現代の奴隷制度」に惹かれて買いました。

 さて、300万円で会社が買えるかどうかは別として、本当にサラリーマンは会社を買って資本家になれるのでしょうか?

 著者は、大企業で管理職を務めた人であれば、会社のマネジメントの仕組みを一通り理解しているので、中小企業を経営することは可能である、という考えです。

 一方で、「大企業のサラリーマンなんて組織の歯車で、ごく一部の職務を担っているだけなので、いきなり会社の経営などできるわけがない。中小企業の経営はそれほど甘くはない」という批判的な意見もあるようです。

 この点に関しては、私は、どちらかというと著者の意見に賛成です。もちろん中小企業の経営を甘く見ているわけではありませんが、一方で、大企業が長年かけて蓄積してきた会社の組織運営や事業管理のノウハウを、大企業の管理職まで務める有能な人であれば、自然と身についているはずで、例え本人が意識せずとも、会社経営にとって非常に貴重な財産になっているはずです。したがって、この経験や知識を活かして、後継者のいない中小企業を買い、社長として事業運営を行うというのは、簡単ではないにしても、決して無謀なことではないと思います。

 さて、それでは、仮に大企業のサラリーマンが会社を買うとして、何に留意すべきでしょうか? 当たり前のことですが、一番大事なのは、入口で間違わないこと、つまり間違った会社を買わないことです。間違った会社を買わないためにすべきことは、事前の詳細調査(デュー・ディリジェンス)をしっかり行うということに尽きます。デュー・ディリジェンスの切り口(分野)は大まかに言って以下の通り分かれます。

(1)事業デュー・ディリジェンス  対象事業が持続可能なものなのか、成長性はあるのか、といった事業戦略の基本に関することを調査するとともに、会社を買った後の経営をどう進めるかという計画(PMI=Post-Merger Integration)を立てるための情報を収集します。市場環境、顧客との関係、競合と比べた場合の優位性といった外部環境から、組織運営、人材のスキル、業務運営の仕組みなど会社の内部環境まで詳細に調査します。

 事業デュー・ディリジェンスは、事業の運営を行う人が対応すべきなので、通常は買い手側の事業責任者(サラリーマンが会社を買う場合は、その人本人)が行います。専門のコンサルタントやM&Aアドバイザリー会社が事業デュー・ディリジェンスを支援してくれることもありますので、必要に応じて専門家を活用しましょう。

(2)財務デュー・ディリジェンス

  会社の決算書や税務申告書を調査し、適切な会計・税務処理が行われているかどうかを確認し、実態財務諸表を作成します。また、会社の損益構造、資金繰りや簿外債務の有無といった点についても分析を行います。主に公認会計士、税理士が関わる分野です。

(3)法務デュー・ディリジェンス

  会社の規程や契約書、特許などの知的財産権など法律面での問題がないかどうか確認します。また、第三者からの訴訟やクレームなど将来会社の損害を与える可能性のある問題や、セクハラ、パワハラなど社内のコンプライアンス問題の有無についても調査を行います。主に弁護士が関わる分野です。

(4)人事デュー・ディリジェンス

  人事規程、制度およびその運用面における課題を分析します。違法行為(36協定違反など)については、法務デュー・ディリジェンスでカバーされるため、人事デュー・ディリジェンスという形では調査を行わないケースもあります。一方で、評価制度、等級制度、賃金制度など法的要件は満たしていても、会社の人事制度として十分に機能していないケースもありますので、法務デュー・ディリジェンスとは別個に人事コンサルタントや社会保険労務士が行う場合もあります。

 以上の通り、デュー・ディリジェンスでは非常に広い範囲の分野での調査が必要になります。大企業で経験豊富なサラリーマンであっても、おそらくこれらの全ての分野を一人でカバーすることは無理でしょう。したがって、M&Aを進める際には、M&Aアドバイザー及びそれぞれの分野に適した専門家を活用して進めることが無難です。

#MA #事業承継

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