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議決権の話


 連日のように日産・ルノーの話題がメディアを賑わせていますが、今後の両者の提携関係がどうなるかという点を考える際に、議決権の話は避けて通れません。1999年に資本提携を行った際には、今回のような事態は当然、想定はしていなかったでしょうが、資本提携(日産・ルノーの場合は、少数持ち分の取得・持合い)やM&Aを考える場合、先のことも考えて、どこまでの議決権を保有すべきかという点を慎重に検討する必要があります

 日産・ルノーのケースですと、ルノーは日産の43%の株式を保有しているので、単独では株主総会の普通決議を通すことはできません。一方で特別決議には2/3の議決権が必要ですので、ルノーは特別決議を単独で阻止することが可能です。したがって、取締役の選任・解任や剰余金の配当などの普通決議は単独では通すことはできないが、定款変更や合併・分割などの特別決議については単独で阻止することができるということです。一方で、仮に日産がルノーの持ち株比率を現在の15%から25%以上まで増やした場合には、「相互保有株式の議決権停止」となり、ルノーが保有する43%の株式は議決権を失います

 したがって、M&Aで会社の支配権を確保する場合には、通常は過半数もしくは2/3以上の株式の取得を目指します。将来の事業再編などの可能性もありますので、2/3以上を取得することが買い手にとっては安全策だと言えます。また、90%以上保有する株主は、「特別支配株主」となり、少数株主の有する全株式を,少数株主の個別の承諾なく,金銭を対価として取得すること(キャッシュアウト)ができます

 また、少数株主の権利として、1%以上で株主提案権、3%以上で総会招集権など、10%以上で解散請求権などが発生します。したがって、会社の支配権を確保したいM&Aの買い手は、できるだけ少数株主を排除したいと考えます。

 以上の理由から第三者への事業承継にあたって、対象企業の株主が分散している場合には、売り手の経営者の方では可能な限り、株式を集中しておいた方が、第三者への承継がスムーズに進みます。これは第三者承継に限ったことではなく、親族や従業員に株式を譲渡する場合であっても、株式の集中化というのは事業承継を進めるにあたっての基本になります。

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